企業・業界研究

企業研究【銀行・金融・証券編】三菱UFJフィナンシャル・グループ/三井住友フィナンシャルグループ/JPモルガン

企業研究 銀行・金融・証券編では、まず日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループを比較します。

2社の企業研究を行った後、外資系の企業としてアメリカのJPモルガンを取り上げて紹介します。

1.銀行業界について

企業や個人を対象に預貯金の受け入れや貸し出しを行うのが銀行です。

「銀行」と呼ばれている機関には、都市銀行、地方銀行、第2地方銀行、信託銀行、信用金庫、信用組合などがあります。

都市銀行では三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンク(巨大総合金融会社)体制が確立されています。

収益を得るしくみ

銀行が収益を得るしくみは大きく「間接金融」「直接金融」に分かれています。

間接金融

「間接金融」は、金融機関が預金者から預かったお金を企業などに貸し付け(融資)、利息を得るしくみです。

直接金融

「直接金融」は、金融機関が株式公開や社債発行を行い、株式市場(投資家)から直接資金を調達するしくみです。

銀行はもともと「間接金融」でしたが、1990年代以降多くの企業が間接金融から直接金融へ移行しました。

さらに規制緩和により投資信託や保険商品の販売、証券仲介などの業務も扱うようになり、これらの「手数料収入」が収益の柱となりました。

また、海外企業の買収(M&A)を行う企業を支援する業務も手掛けています。

個人客向け(リテール部門)では投資信託や保険商品の販売のほか、資産の長期運用コンサルティングやサービスも行っています。

銀行が行っている主な構造改革

日銀(日本銀行)が行うマイナス金利政策により、国内の融資事業による収益は縮小しており、さらにデジタル化という新たな波も到来し銀行業界は大きな変化を迫られています。

①店舗の削減、小型化・自動化

構造改革の一つとして、店舗の削減や小型化・自動化があります。

ネットバンキングの登場で店舗の来店客数が減っており、リテール部門はコスト高で苦戦が続いています。

各社は店舗削減に踏み切っていて、三菱UFJ2023年度末までに500店舗のうち35%を閉店、みずほも500拠点のうち130拠点を減らす予定です。

三井住友は店舗数を減らさず、全店舗の事務スペースを減らし相談業務に特化した店舗作りを進めています。

②フィンテック

フィンテックは「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を融合した技術革新のことで、すでにスマートフォンやビッグデータを活用した決済、送金、資産運用などの新サービスが登場しています。

メガバンクもIT・インターネット企業と手を組み、みずほ銀行はLINE2020年度中にネット銀行「LINE Bank」を設立、三菱UFJ銀行はじぶん銀行(ネット銀行)に、三井住友銀行はジャパンネット銀行(ネット銀行)にそれぞれ出資しています。

みずほ銀行はAIを用いた融資サービス「Jスコア」でITを駆使した新規サービスも行っています。

ネット上で取引されるデジタル通貨「仮想通貨」も注目を集めており、メガバンクは仮想通貨の発行や取引所開設に乗り出しています。

③海外事業

メガバンクは海外事業として資源開発やインフラ整備といった大規模事業への融資を拡大しています。三菱UFJは海外事業での利益が5割を超える勢いです。特に成長著しい東南アジアへの進出が目立ち、三菱UFJがタイのアユタヤ銀行、インドネシアのバンクダナモンを連結化し、三井住友もインドネシアのBTPNを傘下に加えています。

2.企業研究のポイント

企業研究をすることで目指すのは、その会社の仕事をしっかりと理解して自己PRや面接での受け答えにつなげることにあります。

多くの就活生は会社案内のパンフレットや就活サイトなどを読んで企業研究をしますが、企業全体のイメージを掴むことは難しいと思います。

企業研究で見るべきポイントは以下の通りです。

①会社の歴史

会社の成り立ちや手掛けてきた事業を知りましょう。

②主要な数字と株主構成

売上高や従業員数、株主構成を見て企業を比較しましょう。

③ビジネスモデル

現在どのようなビジネスを展開しているのか知りましょう。

④決算書

どの商品や事業が会社を支えているのか、今後成長が見込める事業が何か知りましょう。

⑤企業理念と経営戦略

企業が大切にしている「想い」を知りましょう。

3.三菱UFJフィナンシャル・グループ/三井住友フィナンシャルグループ 2社の企業研究

それでは、具体的に企業研究を行っていきます。

企業のホームページや有価証券報告書を主に資料としています。

有価証券報告書は企業のホームページから見ることができます。

全ての語句やデータを知る必要はありません。

ポイントを押さえて見ていきましょう。

各社の歴史比較

三菱UFJフィナンシャル・グループ

明治時代に海運業で出発した旧財閥、三菱の流れをくんでいる銀行です。

明治時代に創業した10社ほどの銀行が合併を進めていき、昭和の間に4つの銀行になります。「東京銀行」「三菱銀行」「三和銀行」「東海銀行」の4銀行です。

「東京銀行」は貿易銀行として世界各国に拠点を持ち、戦後日本の国際金融を牽引してきた銀行で、明治13(1880)に設立された横浜正金銀行が前身です。

東京銀行員の奮戦記『我々は外資に負けなかった―旧東京銀行の挑戦』(津川清編)がありますのでぜひご一読ください。

「三菱銀行」は三菱の創始者、岩崎彌太郎によって創設された九十九商会に始まり、大正8(1919)に三菱銀行となりました。

「三和銀行」は大阪を中心に関西圏に根付いた銀行で、「東海銀行」は愛知県内で高い実績を残してきた銀行です。

平成8(1996)に東京銀行と三菱銀行が合併し「東京三菱銀行」になり、平成14(2002)には三和銀行と東海銀行が合併し「UFJ銀行」となります。

ちなみに“UFJ”は、United Financial of Japanの頭文字を取って名付けられました。

さらに平成18(2006)に東京三菱銀行とUFJ銀行が合併し「三菱東京UFJ銀行」が誕生しました。

現在は“東京”の文字をなくし「三菱UFJ銀行」という名称になっています。

三井住友フィナンシャルグループ

江戸時代に呉服屋から始まった旧財閥、三井(創始者:三井高利16221694)と財閥系で最古の住友(創始者:住友政友15851652)の流れをくむ銀行です。

それぞれ江戸時代より両替所を始め、明治9(1876)に「三井銀行」明治28(1895)に「住友銀行」として創業しています。

三井銀行はその後第一銀行と合併し「帝国銀行」となり、さらに十五銀行を合併しますが、昭和23(1948)に第一銀行を分離し、昭和29(1954)に社名を「三井銀行」へ戻します。

昭和43(1968)には東都銀行と合併、平成2(1990)には太陽神戸銀行と合併し「太陽神戸三井銀行」と改めます。

2年後には社名を「さくら銀行」と変えますが、平成13(2001)に住友銀行と合併した際に“三井”の名前が復活し「三井住友銀行」となりました。

住友銀行はというと、本店は大阪市中央区にあり、昭和20(1945)に阪南銀行と池田実業銀行を合併し、3年後に一度「大阪銀行」と商号を変えますが(戦後の財閥解体の影響あり)、昭和27(1952)に「住友銀行」に戻しています。

昭和40(1965)には河内銀行、昭和61(1986)には平和相互銀行を合併し、平成13(2001)にさくら銀行との合併で「三井住友銀行」となりました。

三井と住友が一緒になった後も平成15年にわかしお銀行を合併し、平成21年に日光コーディアル証券を完全子会社化しています。

〈比較結果〉

三菱UFJ銀行は貿易銀行として世界でもトップクラスだった東京銀行を合併しており、海外業務に強みを持っています。

また、東京エリアと東海、関西エリアの銀行の合併により各地での安定したシェアを得ています。

三井住友銀行は元財閥の三井と住友の合併により誕生していて、倒産危機にもさらされていた三井銀行を住友銀行が救済するような形での合併でした。

また住友銀行にとっては国内トップに君臨していた三菱UFJ銀行との資産や収益の格差を縮め、首都圏でのシェアを増やせるというメリットのある合併だったと言えます。

三井と住友の2つの財閥が合併するというのは大きな出来事と言え、業界全体の規模が縮小していることを端的に表しています。

主要な数字と株主構成

三菱UFJフィナンシャル・グループ(20203月期)三井住友フィナンシャルグループ(20203月期)
連結経常収益(百万円)

7,299,078

5,314,313

連結業務純益(百万円)

1,073,037

1,085,034

連結経常利益(百万円)

1,235,770

932,064

経常利益率

16.9%

17.5%

当期純利益(百万円)

528,151

703,883

純資産額(百万円)

16,855,738

10,784,903

総資産額(百万円)

336,571,379

219,863,518

自己資本比率

5%

4.9%

従業員数

138,570

86,443

グループ会社の数

連結子会社

251

持分法適用会社

54

連結子会社

174

持分法適用子会社

5

持分法適用関連会社

96

☛用語解説

業務純益・・・本業で得た利益で、一般の会社の営業利益に近い。

経常利益・・・本業でいくら儲けたかを示す業務純益から臨時損益を引いた金額。

当期純利益・・・税金の金額を差し引いた最終的な儲けの金額。

純資産額・・・企業が所有している土地や建物などの「資産」から銀行からの借入金などの「負債」を差し引いた金額。

自己資産比率・・・会社が調達した資金の中で返済を必要としない自己資金の割合。比率が高いほど企業経営が安定している。

持分法適用会社・・・親会社の保有する議決権の比率が20%以上50%以下の非連結子会社・関連会社のこと。連結子会社は親会社の財務諸表に合算するが、持分法適用会社は議決権の比率に応じて反映される。

〈比較結果〉

経常収益を見ると三菱UFJ7.3兆円、三井住友が5.3兆円となっていますが、一般の会社の営業利益に相当する業務純益では三菱UFJ1730億円、三井住友が1850億円と三井住友が上回っています。

これは三井住友が店舗効率化や子会社再編を行い、経費抑制で先行しているためです。

また、銀行の規模を最も分かりやすく知るための指標が総資産です。

三菱UFJ336兆円、三井住友が219兆円と三菱UFJの上回っており、総資産が大きいほど貸し出せる金額が多く、有価証券も多く保有していることになります。

三菱UFJの連結子会社には、アユタヤ銀行(タイ)、PT Bank Danamon Indonesia、三菱UFJ信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、auカブコム証券、三菱UFJニコス(クレジットカード業務)などがあります。

持分法適用関連会社にはインターネットバンクであるauじぶん銀行や、Morgan Stanleyなどがあります。

三井住友の連結子会社には、三井住友銀行、SMBC信託銀行、SMBC日興証券、セディナ(クレジットカード業務)、三井住友DSアセットマネジメント(投資運用業務など)などがあります。

持分法適用会社にはインターネット専業銀行のジャパンネット銀行や、三井住友ファイナンス&リースなどがあります。

■株主構成
三菱UFJFG(20203月時点)三井住友FG(20203月時点)
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)6.85%日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)7.09%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)5.29%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)5.71%
SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT(常任代理人 香港上海銀行東京支店)2.51%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口92.94%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口52.13%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口72.14%
BNYM RE NORWEST/WELLS FARGO OMNIBUS(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行)2.10%NATSCUMCO(常任代理人 株式会社三井住友銀行)2.05%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口91.96%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口52.02%
JP MORGAN CHASE BANK 385151(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部)1.69%JP MORGAN CHASE BANK 385151(常任代理人 株式会社みずほ銀行 決済営業部)1.92%
GOVERNMENT OF NORWAY(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店)1.54%SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT(常任代理人 香港上海銀行東京支店 カストディ業務部)1.85%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口71.46%STATE STREET BANK WEST CLIENT – TREATY 505234(常任代理人 株式会社みずほ銀行 決済営業部)1.41%
STATE STREET BANK WEST CLIENT-TREATY 505234(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部)1.41%バークレイズ証券株式会社1.34%
小計26.98%小計28.52%
その他73.02%その他71.48%
合計100.0%合計100.0%
〈比較結果〉

2社ともの大株主は信託銀行や銀行が占めていて、安定した優良企業であることが分かります。

「日本トラスティ・サービス信託銀行」「日本マスタートラスト信託銀行」という聞きなれない名前が多いですが、これらは年金・投資信託などの運用を委託されている銀行です。

実際の株の買い手が分かりませんが、GPIFや日銀が買っている可能性が高く、信頼度の高い会社ということが分かります。

 

ビジネスモデルを分析しよう

三菱UFJフィナンシャル・グループ

(20203)

セグメント従業員数構成比
法人・リテール事業本部

38,817

28.0%

コーポレートバンキング事業本部

6,655

4.8%

グローバルCIB事業本部

2,442

1.8%

グローバルコマーシャルバンキング事業本部

54,627

39.4%

受託財産事業本部

5,234

3.8%

市場事業本部

2,996

2.2%

その他

27,799

20.0%

合計

138,570

100.0

三菱UFJフィナンシャル・グループの事業は、7個に分かれています。

1) 法人・リテール事業本部

国内の個人、中堅・中小企業に対する金融、不動産及び証券代行に関するサービスを提供しています。

2) コーポレートバンキング事業本部

国内外の日系大企業に対する金融サービス、不動産及び証券代行に関するサービスを提供しています。

3) グローバルCIB事業本部

非日系大企業に対する金融サービスを提供しています。

4) グローバルコマーシャルバンキング事業本部

海外の出資先商業銀行における個人、中堅・中小企業に対する金融サービスを提供しています。

5) 受託財産事業本部

国内外の投資家、運用会社等に対する資産運用・資産管理サービスを提供しています。

6) 市場事業本部

顧客に対する為替・資金・証券サービスの提供、市場取引及び流動性・資金繰り管理業務を行っています。

7) その他

上記事業本部に属さない管理業務等を行っています。

三井住友フィナンシャルグループ

(2020331日現在)

セグメントの名称従業員数構成比
ホールセール事業部門

7,463

8.6%

リテール事業部門

32,926

38.1%

国際事業部門

29,333

33.9%

市場事業部門

1,299

1.5

本社管理

15,422

17.9%

合計

86,443

100

三井住友フィナンシャルグループの事業は9つに分類されます。

1) ホールセール事業部門

国内の大企業及び中堅企業に対して資金調達、運用、M&Aアドバイサリー、リース等を行っています。

2) リテール事業部門

国内の個人及び中小企業のお客様に対応した業務を行っています。

3) 国際事業部門

海外の日系・非日系企業などのお客様に対し国際的な事業展開をサポートしています。

4) 市場事業部門

外国為替・デリバティブ・債権・株式などの市場性商品の提供をはじめ、バランスシートの流動性リスクや金利リスクを管理する金融マーケットに対応した業務を行っています。

5) 本社管理

上記各事業部門に属さない業務を行っています。

〈比較結果〉

三菱UFJは、海外の出資先商業銀行における個人、中堅・中小企業に対する金融サービスを行っている部門の従業員数が39.4%と、最も多くなっています。

2番目に多いのが国内の個人、中堅・中小企業に対する部門で、28.0%です。

三井住友は国内の個人及び中小企業のお客様に対応する部門が38.1%と最も多く、2番目に多いのが海外の日系・非日系企業などに対応する部門で33.9%です。

多少の差はありますが、どちらの銀行もお客様の種類別に「国内の大企業」「国内の個人と中小・中堅企業」「海外の日系・非日系企業」に対応する部門と「市場」に特化した部門があり、従業員の配置も似たような割合になっています。

決算書から会社の現在と未来を知ろう

三菱UFJフィナンシャル・グループ(20203)

※粗利益と営業純益の上位3位にそれぞれ赤い色付けを行っています。

(単位:百万円)

三菱UFJ粗利益構成比営業純益構成比
法人・リテール事業本部

1,501,624

36.9%

298,621

25.4%

コーポレートバンキング事業本部

551,143

13.5%

235,326

20.0%

グローバルCIB事業本部

376,831

9.3%

128,969

11.0%

グローバルコマーシャルバンキング事業本部

804,595

19.8%

232,758

19.8%

受託財産事業本部

242,974

6.0%

71,268

6.1%

市場事業本部

575,175

14.1%

343,044

29.2%

その他

15,623

0.4%

135,019

11.5%

合計

4,067,968

100.0%

1,174,969

100.0%

三菱UFJフィナンシャル・グループの粗利益は法人・リテール事業本部(国内の個人、中小・中堅企業向け)が36.9%1位、グローバルコマーシャルルバンキング事業本部(海外の個人、中小・中堅企業向け)が19.8%2位、市場事業本部が14.1%3位となっています。

営業純益は市場事業本部が29.2%1位、法人・リテール事業本部が25.4%2位、コーポレートバンキング事業本部(国内外の日系大企業向け)が20.0%3位となっています。

三井住友フィナンシャルグループ(20203月)

(単位:百万円)

三井住友連結粗利益構成比連結業務純益構成比
ホールセール事業部門

641,542

23.2%

409,247

37.7%

リテール事業部門

1,257,678

45.4%

234,473

21.6%

国際事業部門

667,083

24.1%

371,240

34.2%

市場事業部門

421,629

15.2%

398,770

36.8%

本社管理等

219,345

7.9%

328,696

30.3%

合計

2,768,587

100.0%

1,085,034

100.0%

三井住友フィナンシャルグループの連結粗利益はリテール事業部門(国内の個人、中小企業向け)が45.4%1位、国際事業部門(海外の企業向け)が24.1%2位、ホールセール事業部門(国内の大企業、中堅企業向け)が23.2%3位となっています。

業務純益はホールセール事業部門が37.7%1位、市場事業部門が36.8%2位、国際事業部門が34.2%3位となっています。

〈比較結果〉

三菱UFJの従業員の配置はグローバルコマーシャルバンキング事業本部(海外の個人、中小・中堅企業向け)が39.4%と一番多くなっていますが、粗利益が一番多いのは法人・リテール事業本部(国内の個人、中小・中堅企業向け)の36.9%で、グローバルコマーシャルバンキング事業本部の粗利益は19.8%(営業純益も同様)です。一方、三井住友はリテール事業部門(国内の個人、中小企業向け)と国際事業部門(海外の企業向け)の従業員数が38.1%33.9%と多いのですが、粗利益も45.4%24.1%と高い利益を出しています。

次に、両社の地域ごとの経常収益を比較してみましょう。

地域ごとの経常収益

(単位:百万円)

三菱UFJ日本米国欧州・中近東アジア・オセアニアその他合計
経常収益

3,830,397

1,439,081

464,523

1,396,033

169,042

7,299,078

割合

52.5%

19.7%

6.4%

19.1

2.3%

100.0%

(単位:百万円)

三井住友日本米州欧州・中近東アジア・オセアニア合計
経常収益

3,496,033

764,766

395,209

658,303

5,314,313

割合

65.8%

14.4%

7.4%

12.4%

100.0%

三菱UFJの方が海外の割合が13.3%高くなっています。海外のネットワークが大きく、また従業員数も海外の割合が多いのも納得です。

企業理念と経営戦略

それぞれ確認しましょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ

・経営ビジョン

https://www.mufg.jp/profile/philosophy/index.html

・経営戦略

https://www.mufg.jp/profile/strategy/index.html

三井住友フィナンシャルグループ

SMBCグループの理念体系

https://www.smfg.co.jp/company/principles.html

・中期経営計画(20202022年度)

https://www.smfg.co.jp/company/strategy/

4.外国銀行~JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーを例に

○外国銀行とは?

外国銀行というと、日本に支店を開設している外国の銀行のことと、外国の銀行が設立した日本法人を指すこともあります。

日本に支店のある外国の銀行の中にはアメリカのJPモルガン・チェースを始め、同じくアメリカのバンク・オブ・アメリカ、中国の中国工商銀行、中国建設銀行、イギリスのHSBCなどがあります。

外国の銀行が設立した日本法人にはアメリカのシティバンク銀行(2007-2017年のみ存在)、韓国のSBJ銀行があります。

外国銀行は、銀行の本店のある国と日本との間で貿易を行う企業や個人が主な顧客となっており、商業銀行や投資銀行としての役割を果たしています。

JPモルガン・チェースはアメリカの銀行の中ではトップの総資産と時価総額を誇ります。

【グローバル金融 総資産・時価総額】             (2019年度)

銀行名総資産時価総額
中国工商銀行436兆円31兆円
中国建設銀行365兆円24兆円
中国農業銀行356兆円19兆円
中国銀行334兆円16兆円
三菱UFJフィナンシャル・グループ304兆円6.9兆円
JPモルガン・チェース284兆円38兆円
HSBC277兆円18兆円
バンク・オブ・アメリカ254兆円29兆円
J.P.モルガン・チェース・アンド・カンパニーの歴史

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーは、アメリカ ニューヨークに本社を置くグローバル総合金融サービス会社です。

グローバルに展開している法人向け事業は「J.P.モルガン」アメリカで展開している中小企業、個人向け事業は「チェース」ブランドを用いています。

設立したのはジョン・ピアポント・モルガンJohn Pierpont Morgan1837-1913)で、アメリカの5大財閥の1つ、モルガン財閥の創始者でもあります。

その基礎を築いたのは父のジュニアス・スペンサー・モルガン(1813-90)です。

モルガン一族はアメリカですでに実業家として事業をおこなっており、駅馬車や両替商、ホテル経営、海運投資、銀行の取締役などをしていましたが、ジュニアスは織物商の共同経営権が与えられたところからビジネス生活をスタートさせ、1854年にはロンドンの国際取引銀行「ジョージ・ピーボディ」の共同経営者となっています。

ピーボディの死後は「J.S.モルガン商会」を立ち上げ、引き続き銀行業務を行います。

J.P.モルガンは父の銀行に入行した後「J.P.モルガン商会」において、政府金融や鉄道金融、工業金融を始め金属、ゴム、石油、石炭、製紙、食品などの有力企業を傘下に加え巨大な財閥を形成しました。

1935年には証券業務を分離して「モルガン・スタンレー商会」を設立、2000年には「チェース・マンハッタン」と合併し「JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー」となりました。

ちなみに、証券業務はモルガン・スタンレーに一度分離されましたが、1980年代ごろからJPモルガン・チェースでも再度取り扱うようになっています。

○日本におけるJPモルガン

日本とJPモルガンの関係を強固にした出来事があります。

それは1924年に関東大震災の震災復興公債15000万ドルを日本政府から引き受けたことでした。

当時大日本帝国の財務代理人となったモルガン商会のトーマス・ラモントはその後東京、横浜、大阪の市債発行を引き受け、日本銀行とニューヨーク連邦準備銀行との間を仲介し、1930年には日本の金解禁に際し2500ドルの融資を行っています。

その後、日本が軍国主義になると共に疎遠になりますが1947年に外国銀行として戦後初めて東京に支店を開設しています。

現在日本で展開されているのは以下の1)3)までの会社です。

就活では3社一括で募集しているグループ採用となります。

【日本で展開されているJPモルガンの事業】
1) JPモルガン証券株式会社

投資銀行、債券、株式業務、海外資産管理業務の媒介・顧客サポート業務などを行っています。

日本企業による大型MAにアドバイザーとして関わったり、株式発行や債券発行のための資本調達、日本企業の海外での事業のサポート、海外企業の日本での事業のサポートなどが具体的な業務内容です。

2) JPモルガン・チェース銀行

為替資金業務、資金決済業務などを行っています。

国内の事業法人や機関投資家などのために為替戦略や商品の提案を行う、グローバル展開している企業などの送金関係のサポートを行うなどが具体的な業務内容です。

3) JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資信託委託業務、投資顧問業務、投資一任業務などをおこなっています。

機関投資家向けの資産運用サービスに加え、銀行や証券会社などの販売会社を通じて個人投資家向けの投資信託商品も提供しています。

補足) モルガン・スタンレーについて

JPモルガンだけでなく、モルガン・スタンレーという名前も聞いたことがあるかもしれません。

モルガン・スタンレーは、アメリカで1933年に成立したグラス・スティーガル法によりJPモルガンから投資銀行部門が分離されたことにより誕生しました。

現在はJPモルガンとは別の会社となっており、主要株主は日本の三菱UFJフィナンシャル・グループです。

日本では以下の3社を展開しています。

モルガン・スタンレーMUFG証券:機関投資家や法人向けの金融商品取引業務を行っています。

モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信:機関投資家や個人投資家向けの資産運用業務を行っています。

モルガン・スタンレー・キャピタル:不動産投資関連業務およびPE業務を行っています。

JPモルガンの主要な数字(「財務資料」より)

(単位:百万円)

JPモルガン証券株式会社(2020.3月期)JPモルガン・チェース銀行 東京支店(2019.12月期)JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(2020.3月期)
営業収益

94,810

78,206

20,446

営業利益

24,053

2,733

経常利益

24,042

3,034

3,164

当期純利益

17,387

2,569

2,215

総資産額

8,938,043

4,655,330

21,502

純資産額

226,469

1,504

17,834

従業員数

711

170名ほど

216

ちなみに、JPモルガン・チェースの2019年通期の連結純利益は364億ドル、およそ4兆円です。

5.まとめ

銀行という就職先はメガバンクであればあるほど高学歴を求める傾向が長く続いています。

業界として縮小しているのは確かですが、世界的に見れば各国の政府に融資をしているのが銀行であり、莫大な資産を持っています。

モノを作ることはできませんが、モノを作るためのお金を動かすことはできる業界です。

今は銀行ごとの特色が少なくなってきている状況ではありますが、それぞれの銀行のカラーや勤務先には違いがあります。

どのような人が働いているかを見聞きして選ぶのも良いでしょう。