企業・業界研究

企業研究【商社編】三菱商事・伊藤忠商事・三井物産

ビジネス

企業研究商社編では、幅広い分野を扱っている総合商社の中から売上ランキングトップ3の三菱商事・伊藤忠商事・三井物産を取り上げました。

それぞれどのようなビジネスを展開しているのか確認していきましょう。

1.商社について

商社は商品となるものを国内外から仕入れる、または国内外へ売り込むという生産者から販売者へ橋渡しをするような存在です。

その際の手数料で儲けが発生します。

日本独特の企業形態で、主に海外との取引を行うことで輸入品の多い日本の流通を支えています。

また、商品に携わるだけでなく、様々な分野で見込みのある企業にお金を出資するという投資事業も積極的に行っています。

普段生活している中で商社の存在を身近に感じることはありませんが、コンビニやスーパーの食材の中でも実に多くの商品に商社が関係しています。

商社には総合商社の他に、食品専門の三菱食品、鉄鋼専門のJFE商事など特定のものを扱う専門商社があります。

総合商社が扱う商品は幅広く「ミネラルウォーターから通信衛星まで」などと例えられています。

現在の総合商社の事業を見てみると「資源事業」と「非資源事業」に分けて記されています。

「資源事業」は石炭・鉄鉱石・銅・原油・天然ガスといった資源を扱う事業のことで、「非資源事業」はそれ以外の事業のことを言います。

商社の歴史や現在の取り組みについて詳しく知るための情報源を紹介します。

・日本貿易会 https://www.jftc.or.jp/

日本貿易会は総合商社が加盟する業界団体で、ホームページの中で商社のことを広く深く紹介しています。

2.総合商社で働くということ

ビジネス総合商社で働くと海外赴任を経験することが多く、国内外問わず転勤がつきものです。

また子会社への出向もあり、親会社を離れ子会社に在籍したまま定年を迎えるということもあり得ます。

就職活動をするにあたり商社の中で「自分はこの商品を扱いたい」という強い希望があったとしても、入社後にその部署に配属されないこともありますのでこういったことも頭に入れておきましょう。

3.三菱商事・伊藤忠商事・三井物産 3社俯瞰(ふかん)

3社を詳しく研究する前にそれぞれの企業について客観的に見てみましょう。

2021年度版 就職四季報 総合版』より3社の特色と評価を抜粋し、少し解説を加えて紹介したいと思います。

三菱商事

【特色】総合商社大手で三菱グループ中核。収益基盤が厚い。

→旧財閥の企業グループ「三菱」の中核には「三菱重工業」「三菱UFJ銀行」「三菱商事」の3社があります。

【評価】

事業基盤の厚み、収益力、財務体質は商社首位。

豪資源メジャーと合弁で行う原料炭・石油・天然ガスなどの資源分野のほか、化学品・機械・自動車・食品など非資源分野にも強い万能型商社。

消費者に近い所では三菱食品、ローソンなどが傘下。三菱自動車は持分法適用会社。

サケ・マス養殖事業や空港運営、複合都市開発など非資源分野の強化を進める。

伊藤忠商事

【特色】非財閥系総合商社の雄。非資源事業が強い。

【評価】

伊藤忠兵衛が1858年創業。

丸紅と同根で非財閥系総合商社の雄。

かつては「万年4位」と言われたが、15年度には純利益で初の業界首位に立った。

他商社に比べて繊維が強く、ブランドビジネスに強みを持つ。

「コンバース」ブランドの国内商標権を保有、コンビニのファミリーマートは傘下。

いち早く中国での事業展開を進めてきた商社で、15年にはタイの華僑系財閥の連携し中国の国有複合企業CITIC1.2兆円の巨額投資を行った。

朝型勤務の推奨など働き方改革も打ち出している。

自由闊達な社風も大きな特色。

三井物産

【特色】総合商社の草分け。金属資源やLNGに強み。

LNGは天然ガスを液化させたもので、火力発電の燃料や都市ガスの原料として使われます。

【評価】

総合商社の草分けで三井グループの中核企業。

金属資源・エネルギーなど資源事業に強く、鉄鉱石・原油・天然ガスは断トツの生産権益規模を持つ。

世界各地のLNGプロジェクトに参画。ブラジル権益も多く、資源メジャーのヴァーレに出資。安永竜夫社長の下、非資源事業を強化中。

アジア最大手の民間病院グループIHH社に追加出資し筆頭株主に、ヘルスケアやモビリティなどの新成長分野に経営資源を配分し、収益の柱にする考え。

→旧財閥の企業グループ「三井」の中核として「三井物産」「三井不動産」「三井住友銀行」の3社があります。

3.企業研究のポイント

企業研究をすることで目指すのは、その会社の仕事をしっかりと理解して自己PRや面接での受け答えにつなげることにあります。多くの就活生は会社案内のパンフレットや就活サイトなどを読んで企業研究をしますが、企業全体のイメージを掴むことは難しいと思います。企業研究で見るべきポイントは以下の通りです。

①会社の歴史
会社の成り立ちや手掛けてきた事業を知りましょう。
②主要な数字と株主構成
売上、従業員数、株主構成を見て企業を比較しましょう。
③ビジネスモデル
現在どのようなビジネスを展開しているのか知りましょう。
④決算書
どの事業が会社を支えているのか、今後成長が見込める事業が何か知りましょう。
⑤企業理念と経営戦略
企業が大切にしている「想い」を知りましょう。

4.三菱商事・伊藤忠商事・三井物産 3社の企業研究

それでは、具体的に企業研究を行っていきます。

企業のホームページや有価証券報告書を主に資料としています。

有価証券報告書は企業のホームページから見ることができます。

全ての語句やデータを知る必要はありません。

ポイントを押さえて見ていきましょう。

①各社の歴史比較

三菱商事

三菱商事の歴史は三菱財閥の創業者で土佐出身の岩崎彌太郎(やたろう18351885)にさかのぼります。

「三菱商会」は明治時代に海運業で出発し、その後重工業を軸に成長しました。

二代目社長で彌太郎の弟・彌之助(炭鉱業に力を入れた)、三代目社長で彌太郎の息子・久彌(造船や不動産、銀行業など事業を広げた)、四代目社長で彌之助の息子・小彌太は3人とも海外留学の経験があり、広い世界を知っていたことで世の中の流れを掴んだ経営を進めることができました。

四代目子彌太が社長に就任した際に各事業部を三菱合資会社のグループ企業として独立させる改革を進め、この中で旧三菱商事や三菱重工業などが誕生します。

1945年、敗戦によりGHQが財閥解体を要求し、本社が解散された後多くの社員によって新会社が次々と設立されました。

1950年には旧三菱商事を継承する「光和実業」が設立されます。

その後1952年に「不二商事」「東京貿易」「東西交易」の3社が合併したところに「光和実業」改め「三菱商事」が合併し、1954年に新生三菱商事が発足しました。

一代目社長・高垣勝次郎が積極的に取り組んだのは、海外拠点の整備・輸出拡大(機械、缶詰など)・資源部門の大型プロジェクト(石油、鉱山開発など)でした。

1960年~二代目社長・荘清彦の時代は高度経済成長の時期にあたり、重化学工業を中心に大口契約を次々と獲得しています。

1963年には国内初の「取扱高1兆円企業」となり、経営の近代化としてコンピューターによる事務の効率化が行われました。

1966年~三代目社長・藤野忠次郎の時にLNG開発を行う「ブルネイLNG」に巨額投資を行うなど、海外での資源開発事業に積極的に参画します。

1970年代に高度経済成長が終わり、世界経済が混乱する中で効率化を図りながら事業を進めています。

伊藤忠商事

創業者である伊藤忠兵衛は繊維品の小売業を営む近江商人の家に生まれ、忠兵衛は1858年に近江から泉州、紀州へ麻布を行商する仕事からスタートしています。

翌年には岡山、広島、下関を経由し長崎まで行商を行い、当時日本がアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、オランダと修好通商条約を結んだことで自由貿易が始まり商いの無限の可能性を感じます。

1872年には大阪に呉服太物商「紅忠」を創立、1884年に店名を「伊藤本店」に変更します。

1885年には「伊藤外海組」を作り、海外貿易にも乗り出しました。

当時紡績を中心とする綿製品の輸出が活発だった時期です。

息子の二代目社長・伊藤忠兵衛は東京への支店開設や海外に出張所を開設し商いを広げていきます。

1920年の株式大暴落をきっかけに経営の立て直しを図り、アメリカからの中古紡績機械の輸入をはじめ機械類の取り扱いの強化、鉄鋼、重化学商品、自動車、木材など取扱分野を増やしていきました。

繊維以外も扱う総合商社としての骨組みが次第に形成されていくことになります。

太平洋戦争の際に伊藤忠商事は丸紅商店、岸本商店の2社と併合して「三興株式会社」となり、1944年にはさらに呉羽紡績、大同貿易を併合し「大建産業株式会社」となります。

商社と紡績会社の統合により事業内容は幅広くなり、商社機能に加えて繊維製品、化学品、鉄鋼、製材、鉱山、農林、水産、畜産などのメーカー機能、さらに事業会社に対する投融資も行っていました。

敗戦後に企業が分割され、1949年再び伊藤忠商事として新しく発足します。

繊維、機工、物資の3分野での国内営業と輸出入業務から始まり、繊維以外の分野(航空機、自動車、石油、機械など)を強化していき海外の事業所設立も進めていきます。

その後原子力、化学工業、オートメーション、情報産業など新分野にも着手しています。

三井物産

三井グループのうちの1つですが、創始者の三井高利(16221694)が始めた事業ではありません。

三井高利は三重県松阪の出身で、東京都中央区に呉服屋越後屋(現・三越)を開店することから始まり、金融業でも名を上げます(現・三井住友銀行)

「三井組」と名乗っていた頃で、財閥解体前の旧三井物産が創立したのは1876年のことでした。

入閣する以前に貿易会社・先収会社をやっていた井上馨、英語が堪能で外国商館などに勤めた後井上の会社の副社長だった益田孝、三井組の大番頭・三野村利左衛門の三者面談の末に創立したのが旧三井物産です。

益田が社長となり、三井組の貿易部門を併合し、海外に支店を開設していきます。

当時日本の紡績業が好調で旧三井物産は紡績機械の輸入、綿花の輸入などを主軸にしていました。

トヨタが織機を作っていた頃から支援をしていたことで、現在も関係が続いています。

戦後GHQの財閥解体の指示により解散し、いくつもの会社が設立されます。

再びそれらの会社の大合同が行われたのが1959年で、現在の三井物産としての歩みが始まりました。

1971年のアラブ首長国連邦でのLNG開発に参画、8090年代には豪州、ロシア、インドネシアなどの大型プロジェクトに参画します。

2000年以降は非資源事業でブラジル穀物事業、アジアの民間病院グループ事業など多角的に推進しています。

〈比較結果〉

戦前から存在していた大手商社ですが、3社とも戦後に一度解散しています。

財閥だった三菱と三井は解散後、関連する数社が合併・統合して復活していますが、伊藤忠商事は戦前「三興株式会社」となったのを過度経済力集中排除法により4社に分割されて「伊藤忠商事」が復活しています。

三菱商事は岩崎家によって受け継がれ、発展していった三菱グループが様々な事業を行ううちに商社機能が生まれたという成り立ちです。

伊藤忠商事は繊維品の取り扱いがメインでしたが繊維業の衰退や経済の悪化の中で扱うものが増えていき、総合商社となっていきました。

三井物産は三井が応援するベンチャー企業のような形で始まっています。

3社とも有能な人材を育て、迎えることで時代の流れに沿った事業を進めてきた企業と言えます。

②主要な数字と株主構成
三菱商事(20203月期)伊藤忠商事(20203月期)三井物産(20203月期)
売上高(百万円)

14,779,734

10,982,968

6,885,033

営業利益(百万円)

366,299

451,429

216,827

営業利益率

2.5%

4.1%

3.1%

当期純利益(百万円)

592,151

559,209

411,312

準資産額(百万円)

6,216,894

3,840,609

4,060,932

総資産額(百万円)

18,049,661

10,919,598

11,806,292

自己資本比率

34.4%

35.2%

34.4%

従業員数

86,098

128,146

45,624

グループ会社の数

子会社

1161

持分法適用会社等

446

子会社

309

関連会社及びジョイント・ベンチャー

209

連結子会社

海外 209

国内 74

持分法適用会社

海外 178

国内 45

☛用語解説

・営業利益

売上高から売上原価と人件費やビルの賃貸料、広告宣伝費などを差し引いた金額。

・当期純利益

税金の金額を差し引いた最終的な儲けの金額。

・準資産額

企業が所有している土地や建物などの「資産」から銀行からの借入金などの「負債」を差し引いた金額。

・自己資産比率

会社が調達した資金の中で返済を必要としない自己資金の割合。比率が高いほど企業経営が安定している。

・ジョイント・ベンチャー

共同支配企業のこと。

〈比較結果〉

3社とも営業利益より当期純利益が高い数字になっています。

これは有価証券損益(所有している株式などの有価証券による損益)や金融収益(営業外収益)、持分法による投資損益(子会社である持分法適用会社が親会社に支払う損益)などがプラスの金額のため、本業以外の収益が加算されているからです。

売上高は三菱商事がトップですが、営業利益を見ると伊藤忠商事が一番高く、さらに当期純利益では再び三菱商事がトップになっています。

三菱商事は子会社の数が多いことも利益につながっています。

自己資本比率は3社とも35%程度と安定しています。

従業員数では伊藤忠商事が一番多くなっています。

■株主構成

三菱商事(20203月時点)伊藤忠商事(20203月時点)三井物産(20203月時点)
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)7.50%日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)8.20%日本マスタートラスト信託銀行株式会社9.71%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)6.16%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)5.07%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社4.92%
BNYM RE NORWEST/WELLS FARGO OMNIBUS(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行)4.80%CP WORLDWIDE INVESTMENT COMPANY LIMITED(常任代理人:株式会社みずほ銀行決済営業部)4.25%ビーエヌワイエヌノーウエストウエールズフアーゴオムニバス(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行)4.25%
明治安田生命保険相互会社4.35%ビーエヌワイエム ノーウエスト ウエールズ フアーゴ オムニバス(常任代理人:株式会社三菱UFJ銀行)4.03%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口92.24%
東京海上日動火災保険株式会社4.17%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口92.34%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口52.06%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口92.33%日本生命保険相互会社2.28%日本生命保険相互会社2.05%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(三菱重工業株式会社口・退職給付信託口)2.16%株式会社みずほ銀行2.09%ジェーピー モルガン チェース バンク385151(常任代理人 株式会社みずほ銀行)1.72%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口51.89%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口51.88%株式会社三井住友銀行1.50%
JP MORGAN CHASE BANK 385151(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部)1.41%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口71.72%日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口71.48%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口71.36%ジェーピー モルガン チェース バンク385151(常任代理人:みずほ銀行決済営業部)1.65%ステート ストリート バンク ウェスト クライアント トリーティー505234(常任代理人 株式会社みずほ銀行)1.43%
小計36.18%小計33.53%小計31.40%
その他63.82%その他66.47%その他68.60%
合計100.0%合計100.0%合計100.0%

〈比較結果〉

3社とも大株主は信託銀行や銀行が占めていて、安定した優良企業であることが分かります。

「日本トラスティ・サービス信託銀行」「日本マスタートラスト信託銀行」という聞きなれない名前が多いですが、これらは年金・投資信託などの運用を委託されている銀行です。

実際の株の買い手が分かりませんが、GPIFや日銀が買っている可能性が高く、信頼度の高い会社ということが分かります。

BNYM RE NORWEST/WELLS FARGO OMNIBUS」は三菱商事・伊藤忠商事・三井物産を含む日本の5大商社の株をそれぞれ4%超保有していて、海外の投資家が保有していることは分かりますが、具体的に誰なのかは分かりません。

③ビジネスモデルを分析しよう
三菱商事

(20203)

セグメント従業員数構成比
天然ガス

812

0.9%

総合素材

10,852

12.6%

石油・化学

4,559

5.3%

金属資源

827

1.0%

産業インフラ

9,609

11.2%

自動車・モビリティ

6,557

7.6%

食品産業

24,443

28.4%

コンシューマー産業

20,197

23.5%

電力ソリューション

4,248

4.9%

複合都市開発

762

0.9%

その他

3,232

3.7%

合計

86,098

100

三菱商事の事業は、11個に分かれています。

1) 天然ガス

北米、東南アジア、豪州、ロシアなどにおいて、天然ガス・石油の生産・開発事業、天然ガス(LNG)事業などを行っています。

2) 総合素材

自動車・モビリティや建設・インフラなどの分野で炭素、鉄鋼製品、機能素材など素材の販売取引、事業開発、事業投資を行っています。

3) 石油・化学

原油、石油製品、LPG、エチレン、メタノール、塩、アンモニア、プラスチック、肥料など石油・化学関連分野において販売取引、事業開発、投資などを行っています。

4) 金属資源

原料炭(豪州など)、銅(チリなど)、鉄鉱石、アルミといった金属資源への投資・開発などを通して事業経営に携わりながら、国際的に鉄鋼原料、非鉄原料・製品の供給体制を強化しています。新興国を中心とした地域で需要・市場が伸びています。

5) 産業インフラ

エネルギーインフラ、産業プラント、工作機械、農業機械、鉱山機械、エレベーター、エスカレーター、船舶、宇宙航空関連機器などの事業及び関連する取引などを行っています。

6) 自動車・モビリティ

乗用車・商用車の販売や販売金融を中心に生産、アフターサービスも含めた一連の事業を行っています。

7) 食品産業

食糧、生鮮品、生活消費財、食品素材などの分野で原料の生産・調達から製品製造に至る販売取引、事業開発などを行っています。子会社に食肉の伊藤ハム米久HD、三菱食品(食品卸)、セルマック(ノルウェーの鮭鱒養殖)などがあります。

8) コンシューマー

リテイル、アパレル・S. P. A.、ヘルスケア・食品流通、物流の各領域において商品・サービスの提供、事業開発などを行っています。子会社にローソン、ライフコーポレーション、日本KFCHDがあります。

9) 電力

発電・送電事業、電力トレーディング事業、電力小売事業や発送電関連機器・設備の販売に取り組むと共に、リチウムイオン電池の開発・製造・販売事業、電池サービス事業、次世代エネルギー(水素等)の開発などを行っています。

オランダの総合エネルギー会社Eneco社を子会社化し、欧州におけるプラットホームにしています。リチウムイオン電池の主な供給先は三菱自動車で、電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車の普及が進み市場が拡大しています。

10) 複合都市開発

都市開発・不動産、企業投資、リース、インフラなどの分野において、開発事業、運用・運営を行っています。

伊藤忠商事

(2020331日現在)

事業セグメントの名称従業員数構成比
繊維

7,869

6.1%

機械

13,842

10.8%

金属

501

0.4%

エネルギー・化学品

12,688

10.0

食料

38,494

30.0%

住生活

17,530

13.7%

情報・金融

20,392

15.9%

8

13,999

10.9%

その他

2,831

2.2%

合計

128,146

100

伊藤忠商事の事業は9つに分類されます。

1) 繊維

繊維原料、糸、織物から衣料品、服飾雑貨などグローバルに事業展開しています。スポーツウェアの「デサント」ではブランド品(自社ブランド、ルコックスポルティフなど)を展開しています。

2) 機械

プラント、橋梁、鉄道等のインフラ関連プロジェクトおよび関連機器・サービス、発電・売電事業、水・環境関連事業および関連機器・サービス、船舶、航空機、自動車、建設機械、産業機械、工作機械、環境機器・電子機器、バイオマス燃料トレード、再生可能・代替エネルギー関連ビジネス、医療機器などを扱っています。

3) 金属

金属鉱物資源開発、鉄鋼製品加工、鉄鉱石、石炭、製鉄・製鋼原料、非鉄・軽金属、鉄鋼製品、原子燃料関連の国内・貿易取引、温室効果ガス排出権取引などを行っています。

4) エネルギー・化学品

原油、石油製品、LPGLNG、天然ガス、電力などエネルギー関連商品のトレード、石油・ガスプロジェクトの探鉱・開発・生産業務の推進、熱供給事業、有機化学品、無機化学品、医薬品、合成樹脂、精密化学品、電子材料、蓄電池などのトレードおよび事業を行っています。

5) 食料

原料から食料全般の事業を国内外で生産・流通・販売を行っています。

製油の「不二製油グループ本社」、食肉の「プリマハム」、食品卸の「伊藤忠食品」などが関係会社です。

6) 住生活

紙パルプ事業、天然ゴム事業、タイヤ事業、物流事業などの生活資材・物流分野、不動産開発・分譲・賃貸・管理業や住宅資材などの建設・不動産分野の事業を行っています。

7) 情報・金融

ITソリューション・インターネット関連サービス事業、携帯流通およびアフターサービス事業などの情報・通信分野、各種金融サービス事業や保険事業など、金融・保険分野において事業を行っています。

「伊藤忠テクノソリューションズ」や「ほけんの窓口グループ」などが関係会社です。

8) 8

既存の7カンパニーと協働で新たなビジネスの創出・客先開拓を行っています。主な関係会社は「ファミリーマート」です。

9) その他

海外現地法人の総合商社として多種多様な活動を行っています。

「伊藤忠インターナショナル会社(アメリカ)」、「伊藤忠欧州会社(英国)」、「伊藤忠(中国)集団有限公司」、「伊藤忠香港会社」「伊藤忠シンガポール会社」などが関係会社です。

三井物産

20203月時点)

オペレーティング・セグメントの名称従業員数構成比
鉄鋼製品

1,505

3.3%

金属資源

634

1.4%

エネルギー

888

1.9%

機械・インフラ

17,017

37.3

化学品

5,238

11.5%

生活産業

10,642

23.3%

次世代・機能推進

6,301

13.8%

その他

3,399

7.5%

合計

45,624

100

三井物産の事業は8つのセグメントに分類されています。

1) 鉄鋼製品

インフラ鋼材、自動車部品、エネルギー鋼材他を扱っています。三井物産スチールや日鉄物産などが主な子会社です。

2) 金属資源

鉄鉱石、石炭、銅、ニッケル、アルミニウム、製鋼原料・環境リサイクル他の取り扱い、サービスを行っています。

3) エネルギー

石油、天然ガス、LNG、石油製品、原子燃料、環境・次世代エネルギー他を扱っています。三井石油開発やENEOSグローブなどが主な子会社です。

4) 機械・インフラ

電力、海洋エネルギー、ガス配給、水、物流・社会インフラ、自動車、産業機械、交通、船舶、航空他を取り扱っています。ブラジルではガス配給事業、熱電供給サービス事業、水力発電事業、旅客輸送事業、鉄道車両リースといった事業に投資しています。

他東南アジアやアメリカ、オーストラリアなどでも事業に携わっています。

JAXAから国際宇宙ステーション「きぼう」の超小型衛星放出事業を業務委託されています。

5) 化学品

石油化学原料・製品、無機原料・製品、合成樹脂原料・製品、農業資材、飼料添加物、化学品タンクターミナル、住生活マテリアル他の事業を行っています。

6) 生活産業

食料、繊維、ヘルスケア、アウトソーシングサービス他の事業を行っています。

食品・食料では「スプーン印」で有名な「三井製糖」、日本マクドナルドのパティの受注生産もしている食肉の「スターゼン」、三井食品(食品卸)、三井農林(茶類、飲料原料)などが子会社です。

IHH(アジアの病院事業)、富士製薬工業なども子会社です。スポーツウェア・用品では「ザ・ノースフェイス」「スピード」などを展開する「ゴールドウイン」に出資しています。

7) 次世代・機能推進

アセットマネジメント、リース、保険、バイアウト投資、ベンチャー投資、商品デリバティブ、物流センター、情報システム、不動産他の事業を行っています。

8) その他

世界各地に現地法人があり、貿易及び国内販売や金融関係取引などを行っています。

〈比較結果〉

三菱商事は食品・コンシューマー産業にそれぞれ2割以上の人員が配置されています。

伊藤忠商事は食料に3割、機械、住生活、情報・金融に1割越えの人員が配置されています。

三井物産は機械・インフラに4割弱、生活産業に2割強という構成です。

それぞれ売上高とはどのような関係にあるのかを次の項目で見ていきましょう。

④決算書から会社の現在と未来を知ろう
三菱商事(20203)

※収益と売上総利益の上位3位にそれぞれ赤い色付けを行っています。

(単位:百万円)

三菱商事収益構成比売上総利益構成比
天然ガス

545,822

3.7%

20,878

1.2%

総合素材

1,967,594

13.3%

140,079

7.9%

石油・化学

4,033,043

27.3%

60,563

3.4%

金属資源

1,743,309

11.8%

238,575

13.4%

産業インフラ

512,627

3.5%

94,432

5.3%

自動車・モビリティ

711,057

4.8%

129,535

7.3%

食品産業

1,699,406

11.5%

254,952

14.3%

コンシューマー産業

3,407,811

23.1%

763,071

42.8%

電力ソリューション

81,870

0.6%

41,112

2.3%

複合都市開発

65,091

0.4%

38,202

2.1%

14,767,630

100.0%

1,781,399

100.0%

その他

12,211

7,517

調整・消去

107

215

合計

14,799,734

1,789,131

伊藤忠商事20203月)

(単位:億円)

伊藤忠商事収益構成比売上総利益構成比
繊維

537,513

4.9%

107,462

6.0%

機械

1,212,498

11.0%

194,905

10.8%

金属

643,912

5.9%

105,204

5.9%

エネルギー・化学品

2,639,979

24.0%

217,859

12.1%

食料

3,833,436

34.9%

303,999

16.9%

住生活

831,237

7.6%

157,023

8.7%

情報・金融

764,444

7.0%

249,715

13.9%

8

517,088

4.7%

459,899

25.6%

その他及び修正消去

2,861

0.0%

1,722

0.1%

合計

10,982,968

100.0%

1,797,788

100.0%

三井物産20203月)

(単位:百万円)

セグメント収益構成比売上総利益構成比
鉄鋼製品

250,090

3.6%

24,554

2.9%

金属資源

1,075,179

15.6%

225,966

27.0%

エネルギー

893,697

13.0%

141,537

16.9%

機械・インフラ

911,766

13.3%

134,182

16.0%

化学品

1,544,220

22.5%

116,757

13.9%

生活産業

2,018,062

29.3%

134,924

16.1%

次世代・機能推進

185,385

2.7%

60,099

7.2%

6,878,399

100.0%

838,019

100.0%

その他

8,032

1,010

調整・消去

1,398

394

合計

6,885,033

839,423

〈比較結果〉

三菱商事の収益は石油・化学が1位、コンシューマー産業が2位、総合素材が3位、そして売上総利益はコンシューマー産業1位、食品産業2位、金属資源が3位という結果になりました。

利益の高いコンシューマー産業と食品産業で働く従業員数が多いのも納得です。

石油・化学は資源部門で、収益の27.3%を占めますが利益は全体の4.3%と少なく、その時の情勢などに大きく左右されてしまいます。

伊藤忠商事の収益は食料が1位、エネルギー・化学品が2位、機械が3位、そして売上総利益は第81位、食料が2位、情報・金融が3位です。

8、食料、情報・金融はそれぞれ従業員の割合が10.9%30.0%15.9%となっていて、中でも第8の利益率の高さが目立ちます。

これはファミリーマートの子会社化によって増益したことが関係しています。

三井物産の収益は生活産業が1位、化学品が2位、金属資源が3位、そして売上総利益は金属資源が1位、エネルギーが2位、生活産業が3位という結果になりました。

金属資源、エネルギーは従業員の割合が1.4%1.9%と少ないセグメントですが高い利益を出しています。

従業員数が全体の4割弱と多くを占める機械・インフラは飛びぬけて高い売上はありませんが、収益・売上総利益ともに4位という成績です。

3社とも資源事業の業績にリスクを抱える中で、再生可能エネルギーや新素材・新機能、新興国での事業などに力を入れて将来に備えています。

次に、3社の地域別の収益を比較してみましょう。

地域別収益

(単位:百万円)

三菱商事日本シンガポールアメリカその他合計
売上高

8,101,316

1,985,698

1,648,547

3,044,173

14,779,734

割合

54.8%

13.4%

11.2%

20.6%

100.0%

(単位:百万円)

伊藤忠商事日本米国シンガポール中国豪州その他合計
売上高

8,686,037

588,588

534,239

287,017

222,383

664,704

10,982,968

割合

79.1%

5.4%

4.9%

2.6%

2.0%

6.0%

100.0%

(単位:百万円)

三井物産日本アメリカシンガポールオーストラリアその他合計
売上高

3,507,548

655,826

652,804

520,467

1,548,388

6,885,033

割合

50.9%

9.5%

9.5%

7.6%

22.5%

100.0%

〈比較結果〉

三菱商事と三井物産は約半分が日本での収益で、伊藤忠商事は約8割が日本での収益となっています。

3社とも次に多いのがアメリカとシンガポールです。

三井物産はオーストラリアが7.6%と高いですが、オーストラリアでの鉄鉱石の産出量が3社の中でずば抜けて高いことが関係しています。

⑤企業理念と経営戦略

それぞれ確認しましょう。

三菱商事

・企業理念

https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/

・中期経営戦略2021

https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/

伊藤忠商事

・企業理念

https://www.itochu.co.jp/ja/about/mission/index.html

2020年 経営計画

https://www.itochu.co.jp/ja/about/plan/index.html

三井物産

・経営理念

https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2020/1231288_11207.html

・中期経営計画

https://www.mitsui.com/jp/ja/company/outline/management/index.html

6.まとめ

商社は日本独特の企業スタイルで、一見商社を通しての商売は値も張るし時間もかかるように思えます。

日本でも商社不要論が昔からあります。

それでも商社を通すのは、お金のリスクが少ない(商社はお金を持っているので支払いが滞ることがないため)ことや、海外との不慣れで煩雑なやり取りを代わりに行ってくれるなどメリットがあるからです。

今のところ大手商社は大きな合併を行わずに独立を保っています。

専門分野に固執せずに新しい分野に挑戦し続けているから一つ大きな損失が生まれても他で補填出来ている、分散投資している結果とも言えます。

しばらくは業界の見通しは良いと思われますので、グローバルに活躍できる人材になれるよう今できることをしっかり磨いておきましょう。